長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するために、大きく分けて以下のような措置が講じられている住宅を指します。
基準をクリアし、認定を受けた住宅。共同住宅が長期優良住宅と呼ばれます。
①長期に使用するための構造及び設備を有していること ②居住環境等への配慮を行っていること ③一定面積以上の住戸面積を有していること ④維持保全の期間、方法を定めていること ⑤自然災害への配慮を行っていること |
上記のうち①は建築物に関する技術的な基準で構成されており、その多くは住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度の基準(以下「評価方法基準」といいます。)を準用しています。
また、上記①~⑤の全ての措置を講じ、所管行政庁(都道府県、市区町村等)に認定申請を行えば、長期優良住宅としての認定を受けることが可能となっています。
長期優良住宅の認定条件は10項目
長期優良住宅として認定されるには、8項目(共同住宅等の場合は10項目)を高い基準でクリアする必要があります。
参照:長期優良住宅 認定制度の概要について〈新築〉|国土交通省(以下同)
本章では、認定基準各項目の内容を、詳しく解説します。
1.劣化対策 |
長期優良住宅は、数世帯にわたって利用できる構造躯体を有していなければなりません。
劣化対策(構造躯体等) 等級3 かつ 構造の種類に応じた基準を満たす必要があります。
2.耐震性 |
数百年に一度程度の極めて稀な地震が発生しても、損傷レベルを低減できる措置が施されている必要があります。
住宅を継続使用するための改修を容易にすることが目的です。以下基準のいずれかを満たす必要があります。
■ 耐震等級(倒壊等防止) 等級2 *¹ または 等級3
■ 耐震等級(倒壊等防止) 等級1 かつ 安全限界時の層間変形を1/100(木造の場合1/40)以下
■ 耐震等級(倒壊等防止) 等級1 かつ 各階の張り間方向及びけた行方向について所定の基準*² に適合するもの(鉄筋コンクリート造等の場合に限る)
■ 品確法に定める免震建築物
※1:壁量計算においては、令和7年4月1日以降の壁量基準による場合に限る(なお、壁量基準においては施工後1年間は旧基準によることが出来る)
※2:各階の張り間方向及びけた行方向について、しれぞれDsが鉄筋コンクリート造の場合は0.3(鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は0.25)かつ各階の応答変位の当該高さに対する割合が1/75以下であること又はDsが鉄筋コンクリート造の場合は0.55(鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は0.5)であること。
3.省エネルギー性 |
長期優良住宅は、断熱性能などが確保され、一定以上の省エネ性を有していなければなりません。
断熱等性能等級 等級5 かつ 一次エネルギー消費量等級 等級6 を満たす必要があります。
4.維持管理・更新の容易性 |
住宅に使われる設備や配管は、構造躯体よりも短寿命です。
それらの点検や清掃、補修、更新を容易に進められる措置が講じられていることも、長期優良住宅の基準となっています。
戸建ての住宅・共同住宅ともに、維持管理対策等級(専用配管) 等級3 を満たす必要があります。
共同住宅では、維持管理対策等級(共用配管) 等級3 、更新対策(共用排水管) 等級3 が必要です。
5.可変性 |
可変性とは、暮らす人のライフスタイルに合わせて、間取りを変更できる措置があることを示します。
共同住宅のみ適応される基準で、 躯体の天井高 2.650mm 以上 が求められます。
6.バリアフリー性 |
共同住宅のみ適応される基準です。
将来的にバリアフリー化が必要になった際、改修可能な措置が講じられる必要があります。
共用廊下に必要なスペースが確保されており、高齢者等配慮対策等級(共用部分) 等級3 が必要です。
7.居住環境 |
長期重量住宅には、地域に溶け込み、良好な景観の維持向上へ寄付が求められます。
建築予定地に以下の決まりがある場合、その内容と調和しなければなりません。
■ 地域計画
■ 景観計画
■ 条例によるまちなみ等の計画
■ 建築協定
■ 景観協定
※申請先の所管行政庁に確認が必要
8.住戸面積 |
住む人が心地よく快適に暮らせるよう、床面積も決められています。
9.維持保全計画 |
維持保全計画とは、建築時から将来を見据えて、点検・補修が定期的になされる計画があることを示します。
長期優良住宅は、以下の部分について点検・補修計画を定めなければなりません。
■ 住宅の構造耐力上主要な部分
■ 住宅の雨水の侵入を防止する部分
■ 住宅に設ける給水又は排水のための設備
政令で定めるものについて仕様並びに点検の項目及び時期を設定
10.災害配慮 |
最初は災害対策です。自然災害が起きたときに、被害を防止・軽減できる措置が必要です。
災害発生のリスクは、所轄行政庁がハザードマップで示しています。
被害発生リスクがある地域に長期優良住宅を建築する場合、リスクの高さに応じて所轄行政庁が定める措置を講じる必要があります。
※申請先の所管行政庁に確認が必要
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅の認定を受けた住宅は、補助金、住宅ローンの金利の引き下げ、税の特例や地震保険料の割引等を受けることが出来ます。
住宅ローンの金利の引き下げ |
フラット35での住宅ローン借入に対する金利も、引き下げられます。
税の特例措置 |
長期優良住宅の認定を受けることで、税の特例措置が拡充されています。
< 2025年12月31日までに入居>
所得税(住宅ローン減税):限度額の引き上げ
控除対象借入限度額 4,500万円
子育て世帯または若者夫婦世帯*の場合は
控除対象借入限度額 5,000万円※19歳未満の子を有する世帯または夫婦いずれかが40歳未満の世帯
(控除率 0.7% 控除期間 最大 13年間 → 最大 455万円控除)
所得税(投資型減税)
標準的な性能強化費用相当額(上限:650万円)の10%を、その年の所得税額から控除
※住宅ローン減税と投資型減税は、いずれかの選択適用(併用は不可)
< 2027年7月31日までに新築>
登録免許税:税率の引き下げ
① 保存登記 0.15% → 0.1%
② 移転登記【戸建て】 0.3% → 0.2%
【マンション】 0.3% → 0.1%
< 2026年3月31日までに新築>
不動産取得税:課税標準からの控除額の増加
控除額 1,200万円 → 1,300万円
固定資産税:減税措置(1/2減税)適用期間の延長
【戸建て】 1~3年間 → 1~5年間
【マンション】 1~5年間 → 1~7年間
地震保険料の割引 |
長期優良住宅では、認定基準に定める耐震性が求められます。
所定の確認資料を提出することで、住宅の耐震性に応じた地震保険料の割引を受けることが可能です。
そのため、長期優良住宅の認定を受けた場合は、地震保険を取り扱う損害保険代理店または損害保険会社にお問合せください。
< 住宅が次のいずれかに該当する場合 >
耐震等級割引
住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)に基づく耐震等級(倒壊等防止)を有している建物であること。
(割引率) 耐震等級2:30%
耐震等級3:50%
免震建築物割引
品確法に基づく免震建築物であること。
(割引率) 50%
※耐震等級割引、免震建築物割引のほかに「耐震診断割引」「新築年割引」もありますが、いずれの割引も重複して適用を受けることができません。
住宅の資産価値が高くなる |
■ 長期優良住宅の認定を受けた住宅は、一般の住宅よりも耐久性が優れているため、資産価値が維持されやすい。
■ 不動産価格査定マニュアルでは、耐用年数が高い評価を受け査定価格が上がりやすい。
■ 住宅履歴(メンテナンス記録)を残すことで、買い手が安心して購入しやすくなる。
光熱費の削減につながる |
■ 断熱性能が高いため、冷暖房の効率が向上し、光熱費を抑えられる
■ 省エネルギー性が求められるため、再エネ設備(太陽光発電など)との親和性が高い
メンテナンス費用が抑えられる |
■ 劣化対策が施されているため、大規模なリフォームや修繕の頻度が減る
■ 計画的な維持管理を行うことで、長期間住み続けられる住宅になる
長期優良住宅のデメリット
メリットが大きい一方でデメリットもあります。
しかしながら以前とは異なり、長期優良住宅の認定件数は2023年に全国で建築された戸建住宅で30%を超え、2024年(9月時点)でも30%を超えていることから、現在では一般的になりつつあると言えます。
認定長期優良住宅は、2009年から開始されましたが、当時と比べ省エネ性や耐震性に優れた建材や工法が増えたことで、基準を満たすハードルが以前よりも低くなっていることが要因であると考えられます。
着工前の申請や完成後の点検などさまざまな手間がかかる |
長期優良住宅には、申請や点検など、手間とコストがかかります。
認定を受けるためには、施主が建築会社などが着工前に申請を行う必要があります。
家が完成してからも10年以内ごと30年以上の間、点検や必要に応じた修繕、改良をし、その記録を作成・保存することになる。
長期優良住宅は認定を受けたあとも、住宅の維持保全のためのいろいろな手間がかかります。
長期優良住宅の性能を満たすための建築コストがかかる |
長期優良住宅の認定基準を満たすために、建築コストもかさみます。
認定を受けるために長期使用構造等確認や認定手数料で5万~6万円程度が目安。
さらに、耐震性や断熱性能を向上させるためのコストも必要になります。
一般的な住宅を建築する場合とくらべて、高品質な建材や設備が必要となるため、1.2~1.3倍程度かかるともいわれます。
また、基準を満たすために、設計変更が発生することがあります。
住宅履歴情報の整備 |
長期優良住宅では、記録と保存が必須の書類が多々あります。
認定申請書や添付図書、意匠・構造・仕様・設備等の関係図書などが該当します。
一生に一度の家づくりだからこそ
長期優良住宅のデメリット
長期にわたり良好な状態で使用できることが大事。
長期優良住宅は一定のデメリットはあるものの、制度的なメリットは多いため、トータルとしては長期優良住宅を建築する価値は十分にあります。
住宅ローンや補助金関連も詳しいスタッフや間取りや仕様専門の設計士と共に、長期優良住宅仕様で快適で安心して暮らせる家づくりをしてみませんか。